オフセット印刷:湿し水
湿し水の調整
ユポのオフセット印刷のキーポイントは湿し水の制御です。
ユポの印刷はインキ乾燥不良トラブルを防ぐため版が汚れるギリギリまで版面の水を少なくしてください。水温調整はコート紙の印刷条件と同じにしてください。
ユポはプラスティックフィルムで水を吸収しません。ですから紙の印刷に適した湿し水の量ではユポ表面にも版面にも水が余ってしまいます。ユポを印刷するには紙のときの湿し水量よりも絞ることが必要です。
版面に与えられる水の量が少しでも多過ぎると、次の2つのトラブルが発生します。
- (1)インキの転移不良(多色機の場合)
- 発生胴よりも前の胴(1胴目あるいは2胴目)の湿し水が多過ぎて、ユポの上に水が残るため、それより後の胴のインキを受け付けなくなるからです。
- (2)インキの乾燥遅延
- ユポの代わりに、ローラー上のインキが余分な水を吸収して、過乳化するからです。過乳化したインキの中の水は、蒸発するのに長時間が必要で、その間ドライヤーの働きを阻害するため、インキの乾燥が大幅に遅れます。また、裏付きを伴うことも多く、インキ密着・インキ皮膜強度も低下します。
対策
- ユポの印刷に適した湿し水を使うことが重要です。給湿液(エッチ液)のメーカーと相談してください。
- 水を最小限にすること。特に、1胴・2胴目の水を、紙の条件の時よりも絞ることが重要です。少なくする目安としては、画線部の小文字が絡む、あるいは、咬えサイドに汚れが出る直前まで絞る必要があります。
- ベタ帯(ベタパッチ)の取り付け
上記(2)のトラブルは、文字・罫線だけといった、絵柄が少ない印刷で、特に起こりやすくなります。例えば、版の余白部分にベタの帯を焼き込めば、ローラー上のインキをリフレッシュさせることができ、インキの過乳化の危険が減少します。
給湿液(エッチ液)
メーカー指定に従って湿し水に「定量添加」してください。また、pH、電導度の値は原水によっても変わりますので、給湿液添加量については給湿液メーカーに必ず相談してください。
- 給湿液のタイプ
- インキの乳化を抑制するタイプをおすすめします。
インキの過乳化によるトラブルを回避しやすくなります。
アルコール(IPA)
湿し水にアルコール(IPA)の使用が可能なら、湿し水の絞りが容易になります。
アルコール代替え液を使用の場合はメーカーの指示に従ってください。
アルコールを使用する場合湿し水が過剰になるとインキ乳化が促進されますので、必ず「厳しく絞って」ください。