ユポは唯一無二の存在!
「あそぶデザイン」で多くの人々を魅了する造形デザイナーで群馬県立女子大学教授の高橋綾先生にユポの良さを伺いました

2022年7月7日

ユポとご縁のある方々に、ユポとの出会いのきっかけやどのような場面で活用されているのか、ユポへの期待などをインタビュー。今回は、人と社会の活性化を目指した作品の研究や、気軽に芸術と関わることができる作品を制作されている・造形デザイナー、群馬県立女子大学教授の高橋綾先生にお話を伺いました。

Profile/高橋 綾 Takahashi RYO

造形デザイナー
群馬県立女子大学 文学部 美学美術史学科 教授

1995年、東京藝術大学美術学部デザイン科を卒業、1997年同大学大学院美術研究科修士課程を修了。1998年から同大学の非常勤講師を務める。2000年から株式会社富士通ゼネラルでインハウスデザイナーを経て、2002年より群馬県立女子大学の専任講師に。2016年より同大学の文学部教授を務める。造形デザイナーとして、スギ・ヒノキの創作玩具公募展グランプリ、神戸ビエンナーレ創作玩具国際コンペティション大賞など多数の受賞歴を持つ。また、これまでに数多くの動く、動かす玩具(キネティック・トイ)を制作。鑑賞者が鑑賞するだけではなく、自ら遊び方を考えることができる作品の開発を進めている。

「何でも楽しんでやる」浪人生活の末に掴んだ“東京藝術大学合格”

はじめに芸術に興味を持ったきっかけは何ですか?

小さいころは、ただ絵を描くのが好きというくらいで、自分が将来、芸術の道に進むなんて思ってもいませんでした。中学生のころは、むしろ美術は嫌いで(笑)。その頃油絵を習っていたのですが、決まりやルールがたくさんあって、それに従って描かなければならない、という指導を受けました。思うまま自由に絵を描くことができず、それで嫌いになったのだと思います。それで、高校では美術を選択せず音楽を選択することにしました。しかし、高校2年生の秋ごろ、友人に誘われる形で大学受験用の美術予備校へ行きました。そのころ自分は試験のない専門学校に行こうと考えていたため、その予備校へ入れてもらえず…。自分の美術への意識の低さを痛感したことがきっかけとなって、気持ちに改め、そこでやっと入校許可をもらいました。また、同じ時期に家のリフォームで、自分の部屋のインテリアをコーディネートする機会がありました。それがすごく楽しかったことも美術の道に入ることになりましたね。

その中で、どうして東京藝術大学に進学しようと思ったのでしょうか?

実は現役のとき、受けた美大は全て落ちてしまいました。同じ美術予備校に通っていた同級生や先輩はみんな美大に合格したこともあり、一人での浪人生活を余儀なくされました。1年間一人で学んでいてもうまくいかず、2浪目からは日本で一番大きい美術予備校に通うことを決意。そこは多くの仲間と出会い、切磋琢磨できる環境でした。その環境の中で、だんだん自分が何をすれば良いのかわかってきたのを覚えています。また、当時の恩師から頂いた「今年受からなかったらもう教えられない」という言葉に鼓舞され、3浪目で受験を東京藝術大学1本に絞り、ようやく合格することができました。私は最初から飛びぬけて優秀だったわけではないですが、意識的に厳しい環境に身を置くことで少しずつ成長していけたのかなと思います。

高橋 綾 (浪人時)

「アートって、自由で楽しいもの」もっと身近で気軽に楽しんでほしい。

高橋先生は、“キネティック・トイ”という新たなジャンルを開拓されたと伺いました。

先ほどお話したリフォームの経験から、もともとはインテリアデザインをやりたいと思っていました。しかし実際に入学してみると、インテリアは平面上の図面があって初めてモノを作ることを知って…。私はもっと自分の手を動かして実際に形を作っていきたいと考えていたので、作るだけでなく、完成後も遊べる玩具の研究に興味を抱くようになりました。そこで玩具の専門家の先生を紹介していただき話を伺うと、開口一番言われたのが「おもちゃの世界では食っていけない」。落胆する間もなく、先生からおもちゃに関するアルバイトを2つ(雑誌付録を作るデザインと学童保育)紹介してもらいました。その中で子どもたちに玩具を使ってもらう経験、工作を教える経験をしたんです。子どもたちが実際に作品を作り、遊ぶ様子を見たことで、彼らにとって「何が面白いのか」「何が大事なのか」を肌身で感じることができましたね。また、大学のゼミではモーターを使った動く作品を多く作っていたこともあり、動きを取り入れた芸術作品であるキネティック・アートと玩具という2つの要素が組み合わさった、キネティック・トイという作風が生まれました。

高橋先生の作品には「遊ぶ」という要素がよく含まれていますよね。どのような想いをこめていらっしゃるのでしょうか?

義務教育が始まると玩具に触れる機会はどんどん減っていきますが、もしかしたら玩具って、アートに触れるきっかけなんじゃないかな、と思って。大人になるとアートは「美術館で見るもの」というイメージになり、日常のシーンと離れていきます。でも、大人も子どもも一緒になって遊べるような、楽しさを共有できるような場をつくりたい。そう考えて、アートに携わる者として、皆さんにそんな「美術の楽しみ方」を提案していきたいと思ったんです。

実際に、私が展覧会でよく使っているキーワード「あそぶデザイン」は「美術館を訪れた人が気軽にアートと触れ合い、デザインできるように」という想いを込めています。

美術館というと、作品を「観る」というイメージが強いのですが、実際に作品に「触れてみる」「遊んでみる」「デザインする」ことで、「美術って楽しい!」と思ってもらえるような作品作りを心がけています。少しずつではありますが、美術の楽しさを皆さんに共有し、もっと広げていけたらいいな、と思って活動しています。

「なくなったら困る、唯一無二の存在」。ユポの特性を生かした作品の数々

ユポにはどのようにして出会われたのでしょうか?

「ユポデザイン大賞というコンクールがあって、応募者にはユポを無料で提供してくれるらしい」と後輩が教えてくれたのがきっかけです。なかなか理想の形にならず、結局応募できず終わってしまったのですが(笑)。実際に手を動かすことで素材の良さに気づき、自分でも積極的に購入するようになりました。耐久性に優れているため、屋外や長期の展示に特に向いています。また、光を当てることでスクリーンとして使用できることもすごいと感じています。

ユポの特性を活かした作品について教えてください。

私は、「自分がデザインした綺麗な形だけが正解というわけではないから、ほかの人の意見も聞いてみたい。見た人に自由に手を加えてもらいたい」と考えています。作品を通して、鑑賞者とコラボレーションすることで作品の可能性が広がると思うんです。こうした考え方で作品を作る時、ユポの「白い」「透ける」という特徴は非常に魅力的です。たとえば、「はなかさ」は傘を使った作品で、花びらとなる部分にユポを使っています。49個の花を病院の中庭に咲かせました。もともとは真っ白の花ですが、ペンで簡単に色が塗れるユポの特性を生かして、ワークショップの参加者に色を塗ってもらったり、シールを貼ってもらったり。それをまた、病院の上階から眺めて皆さんに楽しんでいただける作品になりました。屋外での展示だったので、耐久性があり作品を長く持続できるユポだから実現した作品になったと思います。

はなかさ①
はなかさ②

ほかにも、ユポならではの「透ける」という特性を活かした作品もあります。「鳥トリキューブをつくってみよう」は自然史博物館でのワークショップで作ったもので、キューブの中に鳥の羽が入っている作品です。ただ羽を入れるだけでは面白くないと思い、キューブに色を付け、小さいライトを入れることで羽と描いた絵が光る作品にしました。風車の作品「風雅」も、こうした特性を活かした作品と言えますね。

鳥トリキューブ①
鳥トリキューブ②

ユポを使った「風雅」は国立新美術館 新制作展での入選作品だと伺いました。「風雅」を作ろうと思ったきっかけは何でしょうか?

普通の風車よりも風を受けやすいものを作りたいと思い、ダリウス式風車をヒントにしながら制作しました。そこでマッチしたのが、ユポの「耐久性があり、雨に濡れても紙のように縮まない」という特性です。最初はクリアファイルを使って制作してみたのですが、せっかく色を塗ってもあまり映えなくて…。その後はずっと、気軽にペンなどで色を塗りやすい白いユポを使っています。2018年の八ヶ岳美術館でのワークショップ「オリジナル風車づくり」は、来場者が作品を鑑賞するだけではなく「これは自分の作品だ」と実感できる作品にしたくてワークショップにしました。来場者が気軽に参加でき、来場者と一緒に作品を作り展示していきたいと思っています。このワークショップに参加した子どもたちからは、「見ているだけではなく、実際に作ることができたので楽しかったです」「美術館から帰りたくない!」という嬉しい声を頂きました。

風雅

最後に、高橋先生にとってユポはどんな存在ですか?

ユポは唯一無二の存在だと思います。鉄や粘土のように、他の素材が代替しにくい素材だと思います。今後も「ユポでしか作ることができない」という作品が出てくるんじゃないでしょうか。現在、大学で学生からの相談を受けた際にも「その作品で使う素材はユポが良いと思うよ」というアドバイスすることも多いです。実際に、絵画の研究室の学生が伊勢崎スケートリンクの装飾にユポを使ってくれていますね。

私自身、今後もユポを積極的に利用していきたいと思っています。ユポは私にとって、なくなったら困ってしまう、替えのきかない素材です。

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