アートの可能性が広がる!
和光大学や多摩美術大学などで講師を務める関根秀樹先生にユポの良さをお聞きしました

2021年9月30日

ユポとご縁のある方々に、ユポとの出会いのきっかけやどのような場面で活用されているのか、ユポへの期待などをインタビュー。今回は、ジャンルの垣根を越え、幅広い分野で研究活動をされている関根秀樹先生にお話を伺いました。

Profile/関根 秀樹 SEKINE Hideki

福島県生まれ。和光大学では「火と人間の文化史」「音と楽器のミンゾク学」、多摩美術大学で「絵の具実習」、桑沢デザイン研究所では「プロダクトデザイン論」など異なる分野の講師を務め、全国各地の博物館や美術館等で分野を横断する多彩なワークショップを展開。古代楽器から染色、食文化、鉱物、刃物やブッシュクラフトまで研究分野は広く、木と木をこすり合わせて数秒で火種を作る火起こし世界チャンピオンでもある。「タモリ倶楽部」「スコラ坂本龍一 音楽の学校」「アジア染織紀行」などテレビ出演も多数。『縄文人になる!』(山と渓谷社)、『新版 民族楽器をつくる』(創和出版)、『焚き火大全』(創森社、編著)、『宮沢賢治キーワード図鑑』(平凡社、共著)、『刃物大全』(WPP)など、60冊以上の著書がある。

ジャンルにとらわれず追求する面白さを知った学生時代

はじめに、関根先生のご経歴を教えてください。

福島県の山あいで生まれ、小さいころから岩石鉱物と本と薬草などが趣味でした。小学校の科学クラブで実験に夢中になり、中学はバレー部と地学部と文芸部。高校は物理部と茶道部と空手。さまざまな分野を同時にやるのは昔から変わりませんね。図工の成績は2。高校の音楽は1だったので、楽器や絵の具はまったくの独学です。

小学生のころから年に400~500冊の本を読み、それとは別に漫画もかなり読んでいましたが、高3のとき、工業デザイナー秋岡芳夫先生の著書と出会って心酔し、大学進学と同時に会いに行きました。和光大学では古典文学専攻でしたが、原始技術史の岩城正夫先生と出会い、火起こしや石器、土器、弓矢や吹き矢作りなども身に付けました。ゼミは他の学部も含め4つ掛け持ち。秋岡先生のところにも毎週遊びに行き、工房で木工や竹細工、道具文化に接し、グリーンウッドワークやブッシュクラフトの洋書も読ませてもらいました。図工2のぼくが手を動かして何かを作る楽しさを知ったのは秋岡先生と岩城先生の影響が大きいですね。

今の日本では、文系、理系、芸術系、技術系、スポーツなど、細分化された一つの分野を追求するのが普通、みたいな風潮がありますが、明治以前は文武両道とか多分野を同時になんてごく当たり前でした。ぼくのはちょっと多すぎですが。

最近は、どのような活動をされているのでしょうか。

大学3年からフリーライターは続けていますが、最近は雑誌より本を書くのが中心です。
古代の発火法にせよ民族楽器や木工、竹細工にせよ、学び受け継いできたものを次の世代にバトンタッチする普及活動も、いくつかの分野で何人かの若い仲間と進めています。全部伝え残すのは無理なのでごく一部ですが。非常勤講師を務める大学や専門学校の授業でも、ナイフを使って古代の火起こし道具や古代楽器、木のスプーンなどを作らせたり、焚き火でドングリ料理を作ったり、石や土や植物から絵の具を作ったり、五寸釘でナイフを鍛造したり、人間の歴史の根源から始まるデザインや絵画や音楽の授業をやっています。ただ、ぼくは本質的に文献屋なので、資料が古文漢文、化学式まじりで学生は大変みたいです。

描くことを楽しめるユポ

ユポを知ったきっかけは何だったのでしょうか。

多摩美術大学「絵の具実習」の前任者、上田邦介さんから、普通の紙では不可能なまったく新しい特殊な絵画技法を教えていただいたのが始まりです。上田さんは渋谷の老舗画材店「ウエマツ」と横浜の「絵具屋三吉」の社長を務められ、ご自身も絵の具の発明家・研究家として多くの大学や美術館で講師をされていました。30歳も年長の大先輩ですが、絵の具の研究では誤った権威に抗う同志でもあり共同研究者でもありました。絵画、美術分野では上田さんの教えや想いを受け継いで、大学の授業や全国各地のワークショップでもユポを使うようになりました。

これも上田さんの受け売りですが、ユポ(ニューユポ)は鉛筆の乗りや絵の具の発色がとても優れています。スケッチやデッサンでも色鉛筆や絵の具での彩色でも、ユポは「発色が抜群!」と美大生にも好評で、あまりに鉛筆乗りが良すぎて唖然とする学生もいるくらい(笑)。いま、鉛筆はメーカーの技術革新で軟らかく濃い12Bから硬い10Hまでありますが、正直、6Hを超えるとユポ(ニューユポ)以外の紙にはほとんど色が乗らないんですよ。オーバースペックですね。ユポは12Bから10Hまで、濃い色は濃く、薄くて硬いのは薄く、すべての硬さの鉛筆が鮮明に乗るから、表現の幅が大きく広がります。描いている本人がやたらと腕が上がったように錯覚してしまうくらいなんです(笑)。

大学の授業で関根先生と生徒様
美術大学の授業で、自分で作った絵の具で色見本を作成中。
画材にはユポを使用。

使い勝手の良さが魅力

他には、どのようなところでユポを使われていますか?

上田さんが発明した「リペルアート」という非常にユニークな絵画技法・表現があるのですが、ここでもユポが活躍しています。リペルアートとは、紙の上に黒色や透明な液体を塗り、それが乾かないうちに界面活性剤が入った絵の具を垂らすと、摩訶不思議なパターンが出来上がるというもの。絵の具の滑りが良いことと水がにじまないこと、発色がいいことが紙に求める絶対条件なのですが、これはユポ以外の紙ではどうにもなりません。黒い液は最初木酢酸鉄を使っていましたが、焦げ臭いので上田さんから相談を受け、ぼくが別のやり方を提案し改良されました。あと、美術館の野外ワークショップや野外美術展などで、会期中、雨風にさらされても問題がない紙は、ユポを含め数種類しかありません。強度と発色を優先するとユポを選ぶことが多いですね。

実は学生時代から長く小学館のアウトドア雑誌のライターをやっていたのですが、愛用していた測量用野帖は、後で知ったのですがユポが使われていました。耐久性があって濡れても大丈夫だから、野外での取材や海外でのフィールドワークでは手放せないんです。

思い思いに楽しめるリペルアート
学生によるリペルアートの実験例。

作品の可能性を広げる“相棒”

アートやデザイン制作のシーンにおいて、ユポの活用は進んでいるのでしょうか。

グラフィックデザインやポスター印刷に携わっている人たちの間ではユポはよく知られていますが、日本画や油絵など、絵画の分野でまだまだ浸透していないのが実情です。伝統を重んじる世界なので、和紙じゃなければだめ、西洋の高い紙以外は使わないと考える方もいますが、一度ユポを使うと、便利だし強度も発色もいいので使い続ける場合が多いようです。水で伸びないので和紙やキャンバスみたいに枠に貼るのは難しいですが、板に貼るやり方ならテンペラでも日本画でも油絵でも使えます。折り曲げて鉱物結晶の多面体モデルを作るにも、モビールを作るのにも応用できます。湿度が高すぎる日本で湿気に負けないという性質は重要で、幼児や小中学生の工作とか、デザインの基礎造形なんかにも重宝します。ユポの素晴らしさ、使い勝手の良さをもっと多くの人たちに知ってもらいたいですね。

関根先生ご自身は、「もっとこんなふうにユポを使ってみたい」と思うことはありますか?

だいぶ以前にある美術館で開催した楽器とサウンドオブジェのワークショップで、紙を使ってさまざまな楽器を手作りしました。丸めるだけでラッパのような楽器ができたり、穴の開け方を工夫してフルートやオカリナを作ったり。太鼓もできるし、和紙を細く割いて撚り合わせれば弦楽器の弦もできます。この時はまだユポを知らなかったので別の紙を使ったのですが、ユポなら湿気にも強くて頑丈なので小さな子どもが吹いても唾液でもへたらず壊れにくいし、作品の幅がもっと広がるんじゃないかな。これまでの「当たり前」にとらわれず、頭を柔らかくして、新しいものを取り入れることってすごく大事なことですよね。ユポを使っていて、そんな風に感じています。