コラム [デザイナー紹介]
Designer & Artist 伊藤千織さん

2020年4月16日

「CLUB YUPO」が新しくお届けするコラム、「デザイナー紹介」のトップバッターは、家具デザインから空間アートまで幅広い分野で活動中の伊藤千織さん。企画からデザイン・製造販売までご自身で手掛けているユポ製「paper wreath(ペーパーリース)」は、屋外で使用できるおしゃれなリースとして、デザインにこだわる大人の女性に大人気です。国内では、designshop、百貨店、インテリアショップ、雑貨店などで販売されています。

今回はユポとの出会いから、「paper wreath(ペーパーリース)」の誕生秘話、最新のユポ作品まで、デザインの裏話と共にユポへの想いやこれからの展望についてお話を伺いました。

Designer & Artist 伊藤千織
第1回ユポ・デザイン大賞・入選作品 「Kid’s Furniture」

Profile/Chiori Ito

プロダクトデザイナー。札幌生まれ。女子美術大学産業デザイン科卒。(有)宮脇壇建築研究室を経て、デンマーク王立アカデミー建築学校にて家具デザインを学ぶ。1999年札幌に伊藤千織デザイン事務所を設立。家具・雑貨等のインテリアプロダクトやパブリックスペースのデザイン、企業との商品開発などを中心に、北海道をベースに幅広く活動を行っている。

  • ユポ・デザイン大賞…合成紙ユポを素材にして創作された一般公募作品によるコンペティション。若手クリエイターの発掘、ユポの長所のPR、ユポの新たな活用分野の開拓などを目的に、1995年~2004年まで全10回開催されました。

「ペーパーリース」の誕生

ユポ製の「ペーパーリース」を作ったきっかけは、2010年12月の地元・札幌での「60cmのクリスマスリース」がテーマのグループ展です。リースといえばクリスマス、クリスマスといえば子供時代、子供時代に熱中した紙工作、と頭に素材が浮かんで、当初はコースター用の厚紙で試作をしました。でも、切り抜いた絵柄を立ち上げると、ちょっとぶつかっただけで折れてしまい、円状の半立体にした時にもしっくりこなかった。そんな時に母が「ユポがあるんじゃない?」と15年前のコンペで頂いたユポのことを思い出してくれて。残っていた厚いユポ1枚を使って、設営の前夜に徹夜でヒイラギ柄を手でカットしました。すると切り抜いた絵柄がきちんと立ち上がって、手で思いっきり“グシャッ”と掴んでも破れなかったんです。

その後「ペーパーリース」は、翌年別のグループ展でも作ることにしたのですが、今度は商品化を意識して、外部へカットを依頼することにしました。機械のカッティングプロッターで切り抜いたリースは、柄が綺麗に立ち上がり、カットラインも美しく、ユポならではの透け感や独特の陰影が出てきました。それに加え「水に強く破れにくい」ユポの特徴が製品のメリットとしてもマッチし、この時にやっぱり「ペーパーリース」には「ユポ」だな、と落ち着きました。

「ペーパーリース」 雪、もみの木&「ペーパーリースオーナメント」
モビール [awa]

本格的に「ペーパーリース」を製造販売することになった時、試作は手持ちの小さいカッティングプロッターで、小ロットの製造は外注でカッティング プロッターで行なっていました。価格を抑えるため、量産向きのトムソン加工を目指しましたが、やってくれる職人さんと出会うまでが、本当に大変で...。いろいろなご縁で引き受けてくれる和歌山の抜き屋さんと出会い、ようやく実現しました。また、オンデマンド印刷対応のユポもでき、手軽に印刷できるようになったことで、印刷xカットという「オーナメントシリーズ」の展開も出来るようになりました。これからもまだまだ試してみたいことがたくさんあります。

私が「ペーパーリース」を続ける原動力は、さまざまな方とのご縁です。職人さんをはじめとした取引先の方、そしてユポ・コーポレーションさんにはアドバイスをして頂きながら一緒にPRやコラボ企画をしたり、ユポ・ヨーロッパやユポコーポレーション・アメリカの皆さんとも繋がりました。これからはリースの本場である欧米や、アジアの方々にも「ペーパーリース」を楽しんでもらえたら思っています。

ユポとの出会い

初めて「ユポ」を知ったのは、1995年のユポ・デザイン大賞の時です。ちょうどコンペにたくさん応募していた時期で、公募雑誌で目に付いたのが 「第1回ユポ・デザイン大賞」でした。小学校時代から紙工作が大好きでしたし、まだ実績のないコンペなら賞金がもらえるかも (笑)というのと、その時の審査員の先生方にも会ってみたかったし、プレゼンする気持ちで応募申し込みをしました。

「ユポ」という名前を聞いたのも触ったのもこの時が初めてで、変な名前だな~と思いました(笑)。触った印象は、柔らかいのに丈夫で面白いなと。 独特なマット感とソフトな素材色の白が魅力的でした。今でもその印象は変わりません。ちょうどデンマークで家具デザインの勉強をした直後で、さまざまな素材で椅子を作る可能性を探っていたところでした。この素材で強度のある構造体をチャレンジしてみたいと思い、ユポの四六判から1枚でとれる展開サイズを考え、子供が幼稚園で使うイメージで小さな組み立て式の椅子キットを作りました。作品が入選し、表彰式で当時の社長さんや審査員の皆さんにお会いできたのは本当に嬉しかったです。作品にアクセントをつけたくて赤で着色をしたのですが、「色が無かったら上位だったのにね」というコメントを頂き、がっくりしたのを覚えています(笑)。

広がる「伊藤千織×ユポ」の世界

作品作りでは、その時に発見した効果やアイデアを次の作品に繋げています。「ペーパーリース」での発見はユポとカッティングの相性の良さ、独特な陰影の美しさです。他の紙にはない、合成紙ならではの人工美とも言える美しさにはハッとさせられます。しばらくはこの陰影の表現を追求してみたいと思い、カッティングプロッターを駆使して色々なデザインを試しています。特に、一般的には欠点と思われそうな特徴を逆手にとって独自の表現を試みることが楽しくて、ユポのロール紙の強い巻きグセを生かした表現ができないかと考えたデザインが、北海道立三岸好太郎美術館での「子どもと楽しむmima」展の蝶のディスプレイと、今年2月にグループ展で展示販売をした「タペストリー」です。

蝶のディスプレイ
タペストリー

蝶のディスプレイは、札幌出身の画家・三岸好太郎の「海洋を渡る蝶」という作品から着想を得て、軽やかな蝶の大群が海を渡っていくイメージを表現しました。ユポの「巻きグセ」 を縦横ランダムに使って製作することで、自然な陰影が現れ、自由で軽やかな蝶の動きが出来上がりました。ところどころに「ユポトレース」の蝶を混ぜることで、清涼で幻想的な雰囲気になったと思います。

タペストリーは、昨年の「ユポ50周年式典」で担当した装飾でも応用し、ここ数年実験を積み重ねてきたデザインがベースになっています。15mのロールユポに整然と並べた四角や円のパターンをカットし、天井から下げた大きな作品です。穴の抜きの向きによって陰影が変わるロール紙ならではの表情を、広い展示会場でアイキャッチ的に見せながら、購入者が好きな長さにカットしてもらう新しいアートの参加の仕方を考えてみました。この作品を通しまた新たなユポの特長と魅力が掴め、まだまだ発展できそうなデザインです。ユポの投票用紙や静電吸着品もそうですが、逆の発想で素材の特徴を活かすことは実験し甲斐がありますね。

今は「カッティングプロッターxユポ」で製作することが、私のスタイルになりつつあります。ユポは繊維がなく表面が平滑なので刃のキレが本当に良く、カッティングプロッターとの相性は最高です!長年のノウハウが蓄積されユポのプロッターカットについては、誰よりも詳しいと思いますよ(笑)。出会いから20年以上経ちますが、ユポは私にとって新しい表現を広げてくれる相棒のような素材。可能性がたくさんあって未だに感動のある魅力的な素材です。ユポの良さをもっとたくさんの人に伝えたいという気持ちは、社員の人かというくらい大きい (笑)。近年、環境やプラスチック使用の問題など多くの課題がありますが、ユポ・コーポレーションの環境対応の製品開発などの取り組みには、大いに期待しています。個人的にはプラスチックは大好きで、プラスチックだからこそできることや役割があると考えています。そこを踏まえながら、これからも新しいデザインに挑戦していきたいですね。

■Chiori Design

■paperwreath

■designshop